網上葉の書き方


その四  階層構造


東川吉嗣


  ここでは、網際通信の考へ方の基本の一つ「階層構造」について述べ、引き紐の相手番地の指定の仕方などについて述べる。
  網際通信では、情報の送受信に携わる箇々のコンピュータを全世界のあらゆるコンピュータから、一意的に區別する必要がある。そのために、網際通信に參加するための部品に、その製造業者に與へられた番號と、その製造者が附けた製品ごとの製造番號を組み合はせた番號で、その部品を用ゐた機械を特定してゐる。製造業者へ番號を與へてゐるのは「アイ・イー・イー・イー」と略稱される米國電氣電子學會で、製造番號は、それぞれの業者が、箇々の製品に重複しないやうに、任意につけてゐる。例へば、ここに「ティーディーケイ株式會社」製の「エルエイケイ・シーディー〇二一」といふ、ノートパソコンなどのピーシーカード・スロットに差し込んで使ふランカードがある。このカードの裏には、「008098C0F863」と印刷されてゐる。この十二桁の英數字の内、先頭の六桁「008098」が、「米國電氣電子學會」が、「ティーディーケイ株式會社」に割り當てた番號であり、後ろの六桁「C0F863」は「ティーディーケイ株式會社」が獨自に割り當てた番號である。この數字「008098C0F863」は、このランカード一つのみに割り當てられたもので、この數字に基づいて世界中の全てのパソコンと區別してゐる。この十二桁の番號の組を「マックアドレス」と言つてゐる。

  次に、この特定の「マックアドレス」を持つた機械の在処を、全世界の中で特定する必要がある。その原理は、土地の地番を決めるやり方と同じである。例へば、全世界を國家ごとに區分して、その中の日本國を都道府縣に分け、その中の東京都を區や市に分け、その中の世田谷區を三軒茶屋二丁目とかに分け、さらに二番と言ふ區畫のある地點から數えて十六番目の建物がワイケイビルでその中の五階に「クロスヘッド」といふ會社がある。このやうに「クロスヘッド」といふ會社の在処を確定すれば、そこを探す人が、アフリカのどこかにゐる場合でも、澁谷區にゐる場合でも、あるいはその他のどこにゐる場合でも、正しい探し方をして、訪ねて來れば、目的の「クロスヘッド」社にたどり着くことができる。このやうな入れ子の仕組みを、網際通信の分野では「階層構造」と言うてゐるやうである。

  前に例として取り上げた「freehome.kakiko.com/higasikawa/index.html」といふ表記は、全世界のコンピュータの中の「com」といふ區分の中の、「kakiko」といふ區分の中の、「freehome」といふ區分の中の、「higasikawa」といふ區分の中の、「index.html」といふ名前のファイルを示してゐる。但し、上に例としてあげた地番の區分法は、地球上の表面を具體的に區切るといふ區切り方であるが、網際通信での區分は、現實のコンピュータの違ひを反映してゐる場合もあるが、原則として「論理的な」區分、抽象的な區分である。その意味では、「freehome.kakiko.com」の部分と「higasikawa/index.html」の部分の記述順序がひつくり返つてゐるのは、非論理的であるが、かういふ書き方が普及してゐる。
  網際通信でのこれらの管理をしてゐるのが米國の「アイシーエーエヌエヌ」といふ組織で、その元で日本の作業をしてゐるのが「社團法人日本ネットワークインフォメーションセンター」である。
  これまで述べたやうな地番の指定の仕方は、誰がどこにゐても、同じ表記で目的の地番を特定出來るので、「絶對表記」である。それに對して、地番の場合、「向かひの家」とか、「上の階の會社」とか、「右隣の人」とか、行列の「後ろ三人目の人」などと、現在地から見ての位置指定の方法がある。これは「相對表記」である。
  前回の説明では引き紐をつけるときの、「目的の網上葉や目的のファイルの在処」として、「絶對表記」で記述したが、「目的の網上葉や目的のファイルの在処」が、いま見てゐる網上葉が格納されてゐるコンピュータの中にあれば、その位置を「相對表記」で記述することができる。
網上葉を作成して発表せうとした場合、そのサービスを提供する機械「サーバー機」へ、電氣的に這入り込んで、自分の作つた網上葉のファイルを送り込んだり、書き換へたりする權利を貰ふ必要がある。その時に、自分が權利を及ぼすことのできる論理的な區分を與へられる。前の例でいへば、「freehome.kakiko.com/higasikawa/index.html」の場合、「freehome.kakiko.com/」といふ「サーバー」を管理してゐる人から與へられたのが「higasikawa」といふ區分で、その區分の中に「index.html」といふ名のファイルがあるといふことである。この場合、「higasikawa/index.html」で、「higasikawa」といふ區分の中の「index.html」といふ名のファイルであることを示してゐる。この「index.html」といふ名のファイルから、同じ「higasikawa」といふ區分の中にある別のファイルに引き紐をつける時は、「freehome.kakiko.com/higasikawa/」を省略して、ファイル名のみを指示するだけでよい。例へば、「freehome.kakiko.com/higasikawa/nisikawa.html」といふファイルがあり、そこへ引き紐をつける時は、

<a href="nisikawa.html”>『西川姓について』</a>

とすればよい。
また、「higasikawa」といふ區画をさらに區分して「nisikawa」といふ區画を作り、その中に「nisikawa.html」といふファイルがある場合は、「/nisikawa」として、區画を表示して、

<a href="/nisikawa/nisikawa.html”>『西川姓について』</a>

とすればよい。
このやうな入れ子のしくみを持つ區画を「ディレクトリー」もしくは「フォルダー」といふ。また、階層構造の観点から、入れ子を含む階層を上、子の階層を下と表現する。つまり、現在位置のファイルから見て、下の階層にあるファイルを指定するには、「/」で區切りをつけて、その階層の名を書き、さらに「/」をつけてファイル名を書くことで指定できる。「higasikawa」といふ區画にあるファイルから、その下の「nisikawa」といふ區画の下にある「nisi」といふ區画にある「nisiyama.htm」といふファイルを指定するには「/nisikawa/nisi/nisiyama.htm」とすればよい。
次に、現在位置のファイルから見て、上の階層にあるファイルを指定するには、「../」で表現する。例へば、「freehome.kakiko.com/higasikawa/nisikawa/nisi/nisiyama.htm」の「nisiyama.htm」といふファイルから、「freehome.kakiko.com/higasikawa/index.html」を指定するには、現在地の「nisiyama.htm」といふファイルは「nisi」とふ區画にあるので、「../」で、一つ上の「nisikawa」區画を指定し、「../../」で二つ上の「higasikawa」區画を示すので、「../../index.html」とすればよい。


○アイ・イー・イー・イー - 「IEEE」のことで、「the Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.」の省略で、組織案内の網上葉に「IEEE(Eye-triple-E)」と書いてゐる所を見ると、「アイ・トリプルイー」とでも讀んで欲しいらしい。しかし、國語の文脈の中では、「外國語である英文の略語を英語風に讀む」のは無理な話。
○マックアドレス - 「Media Access Control Address」網際情報の手掛かりを司る番地との意味。
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この網上葉の履歴
○平成二十九年四月十六日、電子飛脚の宛先番地の訂正。
○平成二十二年四月二十四日、字句の訂正。
○平成十五年十一月十七日、掲載開始。

制作者  東川吉嗣  平成十五年、乃至二十九年
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